美苦尼・玄娘〜恥辱の西遊記 第95話

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「ば、ばかやろ。お師匠様はな、手前ぇが一晩中騒いでたおかげで眠れなかったんだ、それを・・・」

「ご、悟空さん!」

慌てて悟空の口に手をやろうと手を伸ばす。
だがもちろん、座ったままではそんな所まで手が届くはずもない。

「ほう。庵主様は気が散って眠れませんでしたか。これは失礼しました。しかし、どうしてお坊様がその事をご存知なんで?」

「そ、そんな事はありません、私は・・・」

玄娘が慌てて否定する。
気が散って眠れなかったなんて、負けたみたいで悔しい、という気持ちも強くあったが、それ以上に、あの声を、一晩中ずっと聞いていた、と思われるのが恥ずかしかった。
だが、王の言葉に、玄娘はハッと気付いて悟空の方を振り返った。

私が寝ていない事を、なぜ悟空さんが知っている?・・・まさか、覗かれてた・・・?

かあーっと頭に血が上る。

嘘だ嘘だ。
そんな事、有り得ない。

疑いを晴らす言葉を求めて、玄娘の顔はほとんど泣きそうに歪んだ。
心の中で否定しながらも、恥ずかしくて悟空の顔をまともに見る事が出来ない。

「ふん。んなこたぁなあ、見なくてもわかるんだよ。この悟空様を舐めるなよ。お粗末ながらこの鼻は、空気の臭いと動きを嗅ぎ分けて、十里四方の物事を、委細詳しく読み取る力があるんだ。お師匠様はああやって、あんたの事を庇ってくれてるがな、本当は寝苦しくて何度も寝返り打ってたんだぞ。大体あんな部屋にお師匠様を案内するなんて、一体どういう了見で」

「ご、悟空さん。それ、ほ、本当ですか?」
悟空が言い募ろうとするのを遮って、玄娘が口を挟んだ。
見ると、少し青ざめているみたいだ。

「何がです?」

「だから、その、見なくても臭いで全てわかるって」

青かった顔が今は真っ赤だ。
その理由を、王も八戒もわかっていたが、悟空だけがわかっていなかった。
八戒が丼に鼻面を突っ込んで、笑いを堪えて肩を振るわせる。

「もちろんですぜ。でなけりゃあ、こんな処まで、危なくって、お師匠様をご案内して歩くなんて出来ませんぜ。なあ、八戒」

「ああ、もちろんそうさ。だが兄貴は、お師匠様の事となると目癈(めしい)になるみたいだからな。どうかね。昨日は随分暑かったからね。案外、お師匠様は寝相が悪くなってただけかも知れないぜ」

「ああ、そう。そうなんです。あの、昨日は熱かったんで、私も、朝起きた時に、枕がベッドの反対の方にいっててビックリして、あは、あはは」

八戒の言葉で、悟空の千里眼ならぬ十里鼻が玄娘の昨夜の恥ずかしい狂悦を見抜くほどのものでないと安心した玄娘は、八戒の言葉に乗って誤魔化し、わざとらしく笑い声を立てた。
玄娘を知る者には、珍しい玄娘の表情である。

「そういう兄貴はどうだったんだい?」
と八戒が水を向ける。

「な、何がよ」

「お師匠様の部屋の側に侍っていたんだろうがよ。こちらの施主さんが騒いでたって、どうせアレだろ?兄貴は平気だったのかい?」

「あ、た、ったりめーじゃねか、この豚野郎」

「悟空さん、人の事をそんな風に言ってはいけません」

「いや、お師匠様。ワシは豚だから豚野郎でいいんですよ。しかし兄貴、兄貴はそういうの、弱いだろう。兄貴もいろいろあったしな」

「いろいろ?」

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