美苦尼・玄娘〜恥辱の西遊記 第73話
聞くだに耐えぬ下品な呼称を連発し、慧姑の乱れ様は、これまでの女の子たちのよがり様を遥かに凌駕するものだった。
少なくとも玄娘の目には、そう映った。
早くも腰砕けになりながら、ガクガク震える脚を踏んばって、どうにもたまらぬといった様子で足踏みする。
足踏みする度に脚立(きゃたつ)の形の台がギシギシなった。
体重が右に左に移動する度に、長大な肉竿で刺し貫かれた慧姑の腰の筋肉が、ニョリ、ニョリ、と蠢いて、妖しく火影を踊らせる。
なにしろ5人もの女がよがり狂わされるのを、目の当たりにさせられながら、自ら慰める事すら禁じられ、その上その女たちを責め苛(さいな)む当の肉棒に奉仕させられ続けていたのだ。
その疼きの切なさ辛さたるや、声を聞かされていただけの玄娘など、比ぶべくもない。
まして、慧姑はその前に、少女の陰核を舐めながら、主の顔に股間を降ろして散々焦らされていたのである。
気が狂うほど求めていた熱いモノを、ようやくの思いで与えられたその悦びは、いかばかりであろう。
王の技巧を凝らした竿使いに喜悦の涙を漏らし、自由にならない身体に切ない悔し涙を流す。
痙攣する太股と、その狭間に突き立って、激しく女の媚肉を掻き回す肉柱を伝い、絶え間なくヨガリ汁が垂れ落ちていた。
その跳ね回る肉柱を、熱に浮かされたようになった女たちが、追い掛け追い掛け舐め倒す。
赤黒い肉幹は、女たちの唾液でヌラヌラと、燭の明かりを照り返していた。
女たちは切ない欲情に涙ぐみながら、そのヨガリ汁と己らの唾液を一緒くたにして執拗に舐めしゃぶり、あるいは愛しげにキスをするのだった。
それでもそうして息を荒げ、腰をもじつかせながらも、後ろにまわした手は前に持ってこようとしない。
主人の言いつけを頑なに守っているのだ。
女たちの切なさと、いじらしい心情が伝わってくるような光景だった。
全く、あんな品性下劣な、でっぷり太った鈍重そうな男の、一体何が良くてあんなに夢中になるのか。
玄娘は多少の苛立ちと共に、そう思った。
一重に、あの化け物のような男根の為に他ならない。
アレが女の身体を狂わせ、頭をバカにする。
その苛立ちの半分は、そんなモノに支配され、屈従させられている彼女たちの、愚かさ故の不幸に対する怒りであったが、もう半分は、実は玄娘自身に向けられたものだった。
玄娘自身こそ、そんな汚らわしいモノから目を離せなくなり、他人の閨房を壁の穴から覗き見て、股間を疼かせ指の動きを止める事も出来なくなっていたのだから。
汁に塗(まみ)れた指先が、陰核をニュルニュルと摘み上げる刺激でまた
「んううぅ、ふっ。んふぅ」
身体がビクンビクンと跳ね、浅く達する。
その時、こちら側に頭の天辺を見せて寝ていた王が、顔を仰向かせた。
ベッドに頭の天辺をつけて顎を上に向け、首で頭を支える形に逆さになった顔が、ニヤリといやらしい笑いを浮かべて玄娘の方を見た。
見開いた玄娘の目が、壁の穴の向こうの、王の目と合う。
「んんぅぅ・・っっ!」
玄娘は悲鳴を上げそうになるのを、辛うじて両手で押さえ込んで、壁の穴から後退(あとずさ)った。
背中に掛っていた蚊帳が揺れて、玄娘の身体の抜けた所から垂れ落ちた。
図らずも物音を立ててしまった事にハッとした時
「ね、寝苦しいんですか?」
と悟空の遠慮がちな声が話し掛けてきた。
ピシリと魂魄が凍りつく。
しどけなく寝間着の裾が割れて、見るも恥ずかしい格好のまま、玄娘は身動き出来なくなってしまった。
心臓が早鐘のように鳴って、堪らない。
それでも何とか、声を励まし
「だ、だいじょうぶ、ですっ」
と答えたが、声が裏返ったようになって、よけいに恥ずかしい思いに駆られてしまう。
玄娘は、悟空がまだ何か話し掛けてくるのではないかと用心してジッとしていた。
「・・・・・・」
が、それ以上悟空が話し掛けてくる様子はない。
「・・・・・・ほふ」
玄娘は、ようやくホッとして裾を直し、ベッドの方に這って戻った。