美苦尼・玄娘〜恥辱の西遊記 第60話

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「八戒さん!いい加減にしないと、ゆ、許しませんよ」

玄娘の声がヒステリックに裏返る。
それまで黙ってやり取りを聞いていた悟空が、やおら口を開いた。

「わかんねえ奴らだな。お師匠様はそんな話は聞きたくないって言ってんだよ。そんな事よりご主人、一つ聞きたい事があるんですがね」

「はあ何でしょう」

王は興醒めな顔付きで悟空の方を見た。

「ご主人は先刻、助け出してきた尼さんをここに匿ったと仰ってたが、そんだけあっちこっち襲われてるのに、何でここだけその妖怪どもに襲われないんですかね?」

「はあはあ、その事ですか。それはですな、私が妖怪に恭順の意思を示して、命を助けられた者だからなんです。もしも女たちを匿っている事が知れたら、まあ恐らく命はないでしょうな。だからこそ、妖怪も私のような臆病者の家を疑ったりしないというわけで。あんな奴にそんな度胸があるか、とね」

「なるほど、王さんは王さんなりに命掛けで皆さんをお守りされているというわけですね。ご立派な事です」

玄娘は幾分ホッとした表情で両手を前に合わせ、そう言った。だが

「そいつはどうだか」

と悟空は不審顔だ。

「どういう事です?」

「まあいいや。ところで、先刻どこかに出掛けたみたいだが、どこにお出掛けだったんだね」

「え?・・・っと、どこにも出ていませんが、なんでまた」

悟空は何も言わずに、戸惑う王の顔色をじっと窺った。

「悟空さん、失礼ですよ」

「ああ、そうか」と王、心得顔になって
「皆さんをお持て成しするために茄子を採りに女を一人、使いに出したんですよ。多分、それを私と見間違えたんでしょうな」

「けっ」

「悟空さん!」

そっぽを向く悟空の代わりに玄娘が謝った。

「全く私の弟子が重ね重ね失礼を申しまして」

「いえいえ。しかし話し込んですっかり遅くなってしまいました。皆さんもお疲れになったでしょう」

王は気分を害した様子もなくそう言うと、立ち上がった。

股間のものはすっかり大人しくなって服の下に隠れてしまっているようだ。
玄娘は自然に目がそちらに行こうとするのを必死で耐えた。

「皆さんがお休みになられる部屋は後で女たちに案内させますから、ごゆっくりお寛(くつろ)ぎ下さい」

王がいなくなると、玄娘は早速悟空を詰問した。

「悟空さん、どうしてあんな失礼な言い方をしたんです」

「いや、みどもはあの野郎が出て行くのを見たわけじゃないんです。みどもたちが風呂に入っているちょっとの間、この屋敷からあの野郎の臭いが消えたんで、どこに行ったんだと思っただけでね。でもどうしてあの野郎、どこにも行ってないなんて嘘をついたんでしょうかね」

「臭いが消えたって、いなくなった事にはならないでしょう。どうして嘘だなんて決め付けるんですか」

「お師匠様、臭いをバカにしちゃいけませんよ。嗅覚が強ければ、臭いは目で見るより確かに周囲の状況を探る手掛かりになるんです」

「まさか・・・」
玄娘は嫌な予感にゴクリと唾を飲み込んだ。

「よ、妖怪・・・ですか?」

「いや、人間は人間なんですがねえ」

やがて女たちがやってきて、玄娘と悟空・八戒をそれぞれ別々の部屋に案内した。

短い廊下が左右に分かれる所で、玄娘は女に連れられ左に曲がる。

悟空は玄娘の後ろ姿を見送った。
玄娘がどこに連れていかれるのかは、匂いでわかる。
悟空はそれについては全く心配していなかった。
ただ気になるのは、その向かう先がこの家の主、王のいる場所の方向だという事だ。

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