美苦尼・玄娘〜恥辱の西遊記 第54話

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一人と一匹と二頭の一行が、幾つかの山を越え野を渡り、出くわす猛禽猛獣を叩き伏せ小妖怪どもを懲らしめつつ道を行く内に、季節は炎天の夏となっていた。
見れば見渡す限りの花の野に蝶の飛ぶ姿もなく、樹は見上げるばかりに高く茂って蝉の喧(かまびす)しく鳴くに任せている。

歩く内に日が暮れてきた。
薄暗がりの視界の彼方に一軒家の燈火がちらちらと見える。

「悟空さん、今日はまたいいタイミングで民家が見えてきましたよ。少し早い気もしますが、たまには良いでしょう。あそこで一晩宿を借りる事にしませんか」

「そいつぁ、いい。兄貴、そうしましょうや。腹ペコじゃぁしっかり荷物運びも出来やしませんぜ」

「この薄ら馬鹿め。てめぇが腹ペコじゃねぇのは食った直後だけじゃねぇか、なにぼやいてやがる。それとも家が恋しくなってきたのか?」

「八戒さん、お家に帰りたくなってきたんですか?」

「な、何をいうんです。兄貴はワシを馬鹿にしてワシがぼやいたなどというんです。ワシは馬鹿正直だから腹が減ったらつい腹減ったと言ってしまうけども、兄貴の言う事をまともにとっちゃあいけません」

「それならいいんです。でももしもそういう気持ちが少しでもあるのなら」

「まさか。お師匠様、意地悪言わないでくださいよぉ」

馬に揺られて玄娘が小さく笑う。
八戒は担いでいた荷物を揺すり上げてなおもクドクド言いもち、その後をついていく。
ほどなく民家の前に辿りついた。

大きな門構えのなかなか立派な家だ。
ここら一帯の領主、というほどの事はなくとも羽振りは良さそうだ。

「こいつはご馳走にありつけそうだぜ」

玄娘は木陰に入って馬を降りた。
悟空と八戒をその場に待たせて門前に近づく。
中庭に竹の寝床を出して昼寝をしている人影を見つけた。
もう夕暮れだというのに昼寝もないものだが、そのだらしない風体から察する限りでは昼からずっとそこで寝っ放しに眠りこけているように見えた。

小山のように盛り上がったでっかい腹が鼾(いびき)と一緒に上下している。
玄娘は思わず八戒を思い起こす。
異様なのはその股の間に四尺(約1.2メートル)ほどの 木の棒が突き立てられていた事だった。
何だろうと不思議に思いながら声をかけた。

「もし、施主様」

それほど大きな声ではなかったのだが、眠りが既に浅くなっていたのだろう、太った男はすぐに目を覚まして身体を起した。
それと同時に股の間に挟まっている棒も斜めに倒れる。

玄娘は嫌な予感がした。
しかしこんなに長い物がまさか・・・疑念を抱きつつ、手を合わせて会釈する。
男も立ち上がって玄娘に近づきつつ同じように手を合わせて会釈を返した。

「これはお美しい庵主様、今日はまたどうした事で?」

その股の間には、やはりかの棒が水平を保ってゆらゆらと揺れている。
近づくにつれ、その棒の細部が明らかになってきた。
細部が明らかとなるにつれ、玄娘の眼(まなこ)が信じられない思いでいっぱいに開かれる。

「ひ、ひぃー!」

玄娘は腰を抜かしてへたり込んでいた。
予感していたとはいえ、まさかそんなと否定した事である。
それを現実に目の当たりにして玄娘は、驚愕のあまり天地の区別がつかなくなった。
そこに悟空の声が飛んでくる。

「てめぇ、何出して・・・!」

「駄目だ兄貴!」

「悟空!」

悟空の放つ激しい殺意に玄娘はハッと我に帰り、思わず呼び捨てで悟空を呼び止めていた。
悟空の拳が男の鼻先でぴたりと止まる。

「・・・さん」

玄娘が小さな声で付け足す。

悟空と八戒はずっと後ろの木陰に立っていたのだが、二人ともその一瞬で玄娘を飛び越し、楼門の内側にまで入りこんでいた。

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