美苦尼・玄娘〜恥辱の西遊記 第36話

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女たちは、大体の話はあらかじめ聞いていたのか、一瞬躊躇はしたものの、すぐに翠蘭に駆けより持ってきた布で、ビクビクふるえる女体をくるみ始めた。
「その棒は抜くなよ。お猿の坊さんが翠蘭の身体に回った毒を抜くために入れてくだすった、ありがたい棒だ。抜けないように気をつけてな」
高老人が女たちの周りを右往左往して声をかける。

玄娘はユルユル立ちあがり
「す、すみませぬが、拙僧は少し気分が悪くなったので、あ、後の事はよろしくお願いします」
と、誰とも目を合わせないようにして、ソソクサと立ち去ろうとした。
「ああ、これはどうも、法師様。とんだ恥ずかしい所をお見せしました」
高老人は、やましさ半分で卑屈なまでに深々と頭を下げる。それを気配だけで受けとめて軽く会釈し、玄娘はややヘッピリ腰の姿勢で前を押さえて茂みをはなれた。
手伝いの女らの内、感のいい何人かの者は玄娘が濡らしている事を直感的に感づいて下卑た笑みを漏らしたが、何も言わなかった。
彼女たちもまた、翠蘭の身体から立ち上る淫靡な瘴気に中(あ)てられて、身内の一部分が熱く敏感になるのを感じていたのだ。
逃げるように走り去っていく玄娘の後ろ姿を目で追いながら、互いに目配せしあいニヤニヤ小突き合う。

見られただろうか。
いや、そんなはずは・・・。でも・・・。
高老人と手伝いの女たちが茂みを回り込んで現れた時の事を、何度も頭の中で再現する。見られたはずはない、という証拠を探して、玄娘の頭は恐ろしいほどの速さで回転し、暴走する。

高老人が姿を現した時の状況を、こんなにも鮮明に覚えているではないか。
悟空さんの如意棒から手を離して、完全に茂みの方を向いていなければ、あの光景は目に残っていないはず。

そうやって、玄娘は自分に言い聞かせ、また同じ光景を頭に描く。
くり返し頭に描くほどに、イメージはより鮮明になっていく。

いつの間にか足早になっている事にハッと気付いた。
顔が熱い。
汗をかいていた。汗をかくほどの陽気だろうか。
それで思い出すのは、翠蘭に施した自分の信じられない行為だ。

あ、あのような、破廉恥な事を・・・記憶が鮮明な像を結ぼうと明滅する。それを玄娘の意志が必死で押し留めようとする。

汗をかいているのは、陽気のせいだ。もうちょっとゆっくり歩かなければ。
次の郷についたら髪を切らなきゃ、と思った。

さてこの後は一晩明けて、悟空が捕まえてきた猪という豚の化け物に、玄娘が八戒という法名を授けて弟子にする下りとなるわけだが、その段は第一章に詳しい。
本章では、高老壮を出た所まですっ飛ばして、浮屠山(ふとさん)に至る所から始めたい。

高老壮を出てひと月余り、烏斯蔵国(うしぞうこく)を抜けフト見ると、高い険しい山がある。
玄娘は馬上から悟空と八戒に声をかけた。

「ずいぶん高い山ですね、気をつけて行きましょう」
すると八戒が
「なあに、大丈夫ですよ。この山は浮屠山(ふとさん)といいましてね、山中には烏巣(うそう)禅師という先生が一人で修行しておられるんです」
「どういう人なんです?」
「なかなか徳行のある方で、ワシも何度かお目にかかった事がありますよ。一緒に修行をするようにと勧められたりもしたんですけど、行きませんでしたわい」
「ふーん、そんな素晴らしい人なら、私も会って見たいものですね」
「まさか、おまえの仲間じゃねえだろうな」

悟空が玄娘に向けている顔の半分で笑いながら、もう半分の方を八戒に向けて睨む。

「兄貴はまだワシの事が信用できないようだな。でもな、烏巣禅師はワシが悪さしてるのを知って、それで修行を勧めてくれたんだ。そんなエライ人の事を悪く言うのはよせ」
美貌の師匠と半獣の弟子二人がワイワイ言いながら山道をいく内に、高い檜(ヒノキ)の木々が見えてきた。

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